link
カテゴリ
以前の記事
2022年 08月 2022年 07月 2022年 03月 2021年 12月 2021年 07月 2021年 03月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 05月 2020年 03月 2020年 02月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 11月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 03月 2018年 02月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 10月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 03月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 01月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2011年 12月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2009年 12月 2009年 10月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 最新のトラックバック
検索
お気に入りブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2017年 01月 10日
1977年2月23日〜3月6日(7月12日〜20日再演)にPARCO西武劇場で上演された「中国の不思議な役人」は、正確には天井桟敷の公演ではありません。当時の天井桟敷新聞(天井桟敷の本公演に関しては、チラシは作らず、独自のフォーマットによる「天井桟敷新聞」を告知ツールにしていました。2つ折り4面の新聞で読み応えあり)を見ても、「中国の不思議な役人」についてはまったく触れていませんし、あくまでパルコプロデュースによる番外編といった位置付けです。伊丹十三や山口小夜子、美術の合田佐和子、衣装のコシノジュンコ、スチールの沢渡朔などといった錚々たるメンバーは、パルコ制作だったからこそ実現したのでしょう。 今から思えば、その時期の寺山修司&天井桟敷は「盲人書簡」「疫病流行記」「阿呆船」という実験的3部作を作り、この1年後には「奴婢訓」という後期天井桟敷の最高傑作の試演にたどり着く、空間的にも演劇のあり方にも根底から揺さぶりをかけていた、もっともとんがっていた時期からすると、西武劇場という通常の額縁舞台の劇場で、有名俳優&スタッフとのコラボ、またバルトークの原曲・レンジェルの原作(台本は寺山好みに大幅に書き換えられてはいましたが)といった縛りなど、当時の寺山からすると明らかに表現としては後退した演劇であったことは確かです。さすがの寺山もこの作品を自分の演劇の流れの一環として認めることができず、苦し紛れに「天井桟敷の出発点である見世物復権」という言い方をしていたかと思います。 のちに体験した寺山修司&天井桟敷の活動と舞台からすると、確かにその位置付けは納得がいきます。しかし何しろこちらはこのとき寺山初体験。侏儒や剃毛半裸の苦力、浮遊する少女、作り物としての役人(ポーの小説「使い切った男」のよう!)などによって現出するグロテスクな集団悪夢のような世界は、十分に刺激的でした。日常とは切り離されデフォルメされたメイクと衣装、照明や音楽、舞台装置が先導する世界づくり、完全な闇、痙攣する異形の肉体と言葉の跳躍。マッチや花火などによる原始的な刺激(消防法の配慮は抜かりなかったよう)。そんな日常に還元できない体験が記憶に織り込まれる不思議。それまでの、物語とか役に対する感情移入といった演劇体験とは、まったく異次元の世界がそこにあったのです。 天井桟敷の演出法の一つに「開場開演」というのがあり(当時は珍しくなかったけど、最近はほとんどないですかね?)、客入れの際からすでに物語の世界が動いていて、劇場内に入った瞬間から日常と切り離された別の空間にスリップする手法。私も自分の公演でしばらくそうしていましたが、お客さんが中途半端に緊張してしまい、あまりうまくいってなかったかなと今では思います。でも、「中国の不思議な役人」のときも確かそうだったと記憶していますが、日常とは地続きではない世界に足を踏み入れた感じ、というのは、椅子に座って自分が見るモードに変わってから「さあ開演」とお話が始まる予定調和な切り替えの世界(映画や音楽のライブとかはそうですね)とは違った困惑が、逆に「これだ!」と思ったのでした。 なので、天井桟敷的にはお遊び(とっても贅沢なお遊びです!)だったかもしれませんが、私は「中国の不思議な役人」の舞台が好きです。見世物として完成されたものに刺激され(それがそのときの天井桟敷的とんがったものではまったくないですが・苦笑)、真似したいと思ったことが、本気で「自分の演劇をつくるのだ」と決めるきっかけになりました。 ちなみに、2009年9月にパルコ劇場で白井晃演出、平幹二朗主演で再演された舞台は見ていません。また今年、若松武史主演で青娥館という劇団が、3月17日から「中国の不思議な役人」上演するそうです。「若松さんが見たい!」とはかなり熱烈に思いますが、さてどうしましょう。
by asabali
| 2017-01-10 04:58
| 演劇
|
ファン申請 |
||